妊活にかかる費用を整理していると、「確定申告で戻ってくる分はあるのだろうか」という疑問にたどり着きます。医療費控除という制度の名前は知っていても、どこまでが対象なのかは分かりにくいところです。この記事では、国税庁が公開している情報をもとに、不妊治療と医療費控除の関係を整理します。ロジカル精子バンクは税務の専門家ではありませんので、個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。
医療費控除は「支払った医療費の全額が戻る」制度ではありません
まず、仕組みの確認からです。医療費控除は、1年間に支払った医療費をもとに所得から差し引く制度で、支払った金額がそのまま返ってくるものではありません。
国税庁のタックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」では、実際に支払った医療費の合計額から、まず「保険金などで補てんされる金額」を差し引き、さらに「10万円」または「その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5パーセントの金額」のいずれか低いほうを差し引いた金額が控除の対象になるとされています。控除額は最高で200万円です。
また、同じページでは、保険金などで補てんされる金額について「その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きます」とされ、「引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません」と説明されています。助成金を受け取った場合の扱いも、この考え方が基本になります。
不妊症の治療費・人工授精の費用は対象とされています
ここが多くの方の関心事だと思います。国税庁は質疑応答事例のなかで、次のように回答しています。
「医師による診療等の対価として支払われる不妊症の治療費及び人工授精の費用は、医療費控除の対象となります。」(国税庁 質疑応答事例「不妊症の治療費・人工授精の費用」/関係法令通達:所得税法施行令第207条)
この事例には「令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。」という注記が付いています。制度の内容は改正されることがありますので、実際に申告される時期の情報を国税庁のページでご確認ください。
読み落とされやすいのが「医師による診療等の対価として」の部分
上の回答は、単に「不妊治療なら対象」と言っているわけではありません。「医師による診療等の対価として支払われる」という条件が前に置かれています。
医療費控除の対象となる医療費については、国税庁のタックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」が「医師または歯科医師による診療または治療の対価」「治療または療養に必要な医薬品の購入の対価」などを挙げ、「その病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額」とされる、と説明しています。誰に対して、何の対価として支払ったのかが判断の軸になっている、ということです。
この視点で見ると、同じ「妊活にかかったお金」でも、医療機関に支払った診療の費用と、それ以外に支払った費用とでは、扱いを分けて考える必要が出てきます。
民間の精子バンクに支払う費用はどう考えるか
結論から申し上げると、この点について当バンクが「対象になります」「なりません」と申し上げることはできません。
理由は二つあります。ひとつは、上で引用した国税庁の回答が「医師による診療等の対価」を前提にしたものであり、医療機関以外に支払う費用について直接述べたものではないこと。もうひとつは、医療費控除の判断が、支払いの内容や実態に応じて個別に行われるものだからです。
ここを曖昧にしたまま「戻ってきます」と書くほうが、かえってご迷惑をおかけすると考えています。領収書をお手元に残したうえで、お住まいの地域を管轄する税務署か、税理士にご確認ください。その際、何に対して支払った費用なのかを説明できるようにしておくと、話が早く進みます。
当バンクの費用の内訳は料金についてのページに記載しています。ご確認の際の材料としてお使いください。
保険適用の話とは別の制度です
費用の話をしていると、医療費控除と保険適用が混ざりやすくなります。この二つは別の制度です。
保険適用は、その医療行為に公的医療保険が使えるかどうかという話で、窓口で支払う金額そのものに関わります。医療費控除は、支払ったあとに、確定申告で所得から差し引く話です。保険が使えなかった費用が、必ず医療費控除の対象外になるというわけでもありません。どちらも「対象かどうか」を扱う制度なので混同されやすいのですが、判断する主体も基準も違います。
保険適用の側の整理は精子提供は保険適用される?不妊治療の保険制度と精子提供の費用を解説、費用全体の考え方は精子提供の費用|2026年の保険適用・自費治療の境目を整理にまとめています。
準備しておくとよいこと
申告の手続きそのものは国税庁のページや税務署で確認していただくのが確実ですが、日ごろの準備としては次の点が挙げられます。
ひとつは、領収書を年単位で分けて保管しておくことです。妊活は年をまたぐことが多く、あとからまとめようとすると手間がかかります。もうひとつは、助成金や給付金を受け取った記録も一緒に残しておくことです。上に書いたとおり、補てんされた金額は差し引く扱いになるため、あとから必要になります。
通院の交通費の扱いなど、細かい論点は国税庁のページに個別の説明があります。ご自身のケースに当てはまるかどうかは、そちらでご確認ください。
費用全体の見通しを立てておきたいという方は、【選択的シングルマザー】「一人で育てる」を現実にするための資金計画と準備や精子バンクを利用すると費用はいくらかかる?医療機関と民間の違いを徹底的に整理するもあわせてご覧ください。
ご相談を承っています
この記事は、国税庁が公開している情報をもとに、制度の枠組みを整理したものです。個別の申告が認められるかどうかを判断できるのは税務署であり、当バンクではありません。金額や対象の可否については、必ず税務署または税理士にご確認ください。
そのうえで、精子提供の進め方や費用の内訳について知りたいという段階でのご相談をお受けしています。ご利用の流れもあわせてご覧ください。気になることがあればお問い合わせからお声がけください。
