精子提供を検討する方が必ず気になるのが「生まれた子どもの法的な親子関係はどうなるのか」という問題です。2020年12月に成立し、親子関係に関する規定(第三章)が2021年12月11日に施行された「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」(生殖補助医療特例法)により、一定のルールが初めて法律で明文化されました。この記事では、この法律のポイントと、まだ解決されていない課題を整理します。
生殖補助医療特例法(2020年成立・2021年施行)の3つのポイント
ポイント①:夫の同意を得て妻が出産した子は夫の子
婚姻関係にある夫婦が、夫の同意を得たうえで第三者の精子提供による生殖補助医療で子をもうけた場合、その子が嫡出であることを否認できない——これが法律で明文化されました(同法第10条)。つまり、「精子が自分のものではない」ことを理由に親子関係を否定することはできません。なお同条は2022年の民法改正にあわせて改められ、2024年4月1日以降は、否認できないのが夫だけでなく夫・子・妻のいずれについてもという内容になっています。
ポイント②:提供者と子の親子関係は、この法律では定められていない
この法律が親子関係について定めたのは、出産した女性を母とする規定(第9条)と、上記の嫡出否認の特則(第10条)だけです。精子を提供した男性と生まれた子との親子関係について定めた規定は、この法律にはありません。附則第3条では、生殖補助医療により出生した子の親子関係を安定的に成立させる観点から、第三章の規定の特例を設けることも含めて検討するものとされており、現在も整備の途上にあります。したがって「提供者には養育費や親権の問題が一切生じない」と法律で明確に定められているわけではありません。インターネット上の断定的な説明を鵜呑みにせず、気になる点は弁護士など専門家にご確認ください。
ポイント③:ただし「医療機関での実施」が前提
▶ 個人間の提供には法律の保護が及ばない可能性
この法律は「生殖補助医療」——すなわち医療機関で行われる人工授精や体外受精を前提としています。SNSや個人間で行われる精子提供について、この法律がどこまで適用されるかは明確ではありません。法的保護を確実にするには、契約書の締結と、信頼できる機関を通じた提供が重要になります。
まだ解決されていない課題
独身女性・同性カップルの親子関係は未整備
現行法は婚姻関係にある夫婦を主な想定としており、独身女性や同性カップルが精子提供で子を持った場合の親子関係については、まだ明確な法整備がなされていません。
出自を知る権利に関する規定も先送り
なお、第三者の精子や卵子を用いる医療のルールを定める「特定生殖補助医療に関する法律案」は2025年2月に参議院へ提出されましたが、審査未了のまま議決に至っていません。生殖補助医療特例法の附則第3条第1項第3号には、生殖補助医療により出生した子に係る情報の保存・管理・開示等(「出自を知る権利」に関わる事項)について、おおむね2年を目途に検討を加えるとの規定が置かれましたが、具体的な制度設計はまだ完了していません。子どもが将来「自分の遺伝的な親は誰か」を知るための仕組みづくりは、引き続き議論が必要な状況です。
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ロジカル精子バンクでは、すべての提供において契約書の締結を必須とし、親権・養育費・将来の接触に関する取り決めを明文化しています。法整備が不十分な現状だからこそ、民間の事業者としてできる範囲で、当事者間の取り決めを書面に残す運用をとっています。
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