精子提供で妊娠が分かったとき、喜びと同時に「ここから先はどうなるのだろう」という戸惑いが訪れる方は少なくありません。産科では何と伝えればいいのか、出生届はどう書くのか――調べても情報が少なく、誰に聞けばいいのか分からないというお声をよくいただきます。
この記事では、妊娠が分かってから出生届を出すまでの流れと、その途中で多くの方が迷われる点について整理します。制度に関わる部分は公的な情報をもとにしていますが、ご家庭の状況によって扱いが変わることもありますので、最終的な判断は窓口や専門家にご確認ください。
まずは産科を受診する
妊娠検査薬で陽性が出たら、産科を受診して妊娠の経過を確認してもらいます。ここから先は、精子提供であるかどうかにかかわらず、一般的な妊娠と同じ流れです。
受診の時期や回数は状況によって異なりますので、医師の案内に従ってください。自治体に妊娠届を出すと母子健康手帳が交付され、妊婦健診の助成を受けられるのが一般的です。
産科に精子提供のことを伝えるべきか
多くの方が迷われるのがこの点です。結論から言えば、伝える・伝えないのどちらが正しいと決まっているわけではありません。
伝えることには、家族歴や既往歴の把握が必要になったときに医師が判断しやすくなるという面があります。一方で、どこまで話すかは本来ご本人が決めることです。話しにくいと感じる場合は、必要な範囲だけを伝えるという選択もあります。医療者には守秘義務がありますので、その点も踏まえてご検討ください。
出生届は「出生の日から14日以内」
お子さんが生まれたら、出生届を提出します。法務省の案内では、届出期間は出生の日から14日以内(国外で出生したときは3か月以内)とされています。
届出人は「父、母、同居者、出産に立ち会った医師・助産師等」、届出先は「子の出生地・本籍地又は届出人の所在地の市役所、区役所又は町村役場」です。必要書類として出生証明書が1通必要になります。出生証明書は通常、出生届の用紙と一体になっており、分娩に立ち会った医師や助産師に記入してもらいます。
戸籍上の扱いは、ご家庭の状況によって変わります
出生届の記載や戸籍の扱いは、ご夫婦なのか、婚姻されていないのかといった状況によって異なります。ここは一律にご説明できない部分ですので、事前に届出先の市区町村の窓口でご確認いただくのが確実です。
不安がある場合は、出産前の落ち着いている時期に問い合わせておくと、産後の慌ただしい時期に慌てずに済みます。
法律上の親子関係について定められていること
2020年に成立した「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」では、親子関係について次のように定められています。親子関係に関する規定は2021年12月11日から施行されています。
第9条は「女性が自己以外の女性の卵子(その卵子に由来する胚を含む。)を用いた生殖補助医療により子を懐胎し、出産したときは、その出産をした女性をその子の母とする」と定めています。第10条は「妻が、夫の同意を得て、夫以外の男性の精子(その精子に由来する胚を含む。)を用いた生殖補助医療により懐胎した子については、夫、子又は妻は、民法第七百七十四条第一項及び第三項の規定にかかわらず、その子が嫡出であることを否認することができない」と定めています。なお第10条は、2022年の民法改正で嫡出否認を申し立てられる人が広がったことにあわせて改められ、2024年4月1日から現在の内容になっています。
つまり、ご夫婦で夫の同意のもとに進めた場合、夫はもちろん、子や妻の側からも、あとからその子が嫡出であることを否認することはできない、という整理になっています。より詳しい解説は精子提供と親子関係|民法特例法を解説をご覧ください。
この法律で定められていないこともあります
一方で、この法律には精子を提供した男性と子との親子関係について定めた規定はありません。生殖補助医療をめぐる法整備は、現在も議論が続いている段階です。
そのため、インターネット上の断定的な説明をそのまま受け取らず、ご自身のケースについて気になる点があれば、弁護士など専門家にご相談いただくことをおすすめします。
お子さんへの伝え方は、急がなくて大丈夫です
妊娠中から「この子にいつか話すべきだろうか」と考え始める方もいらっしゃいます。とても大切な問いですが、出産前に結論を出さなければならないものではありません。
お子さんの年齢やご家庭の状況によって、伝え方も、伝える時期も変わります。少しずつ考えていければ十分です。
妊娠後のご相談も承っています
ロジカル精子バンクでは、妊娠が分かったあとのご相談もお受けしています。「産科に何と伝えたらよいか」「手続きで分からないことがある」といった内容でもかまいません。
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