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事実婚のカップルが精子提供を考えるとき|保険適用・AIDの対象・親子関係

事実婚のカップルが精子提供を考えるとき|保険適用・AIDの対象・親子関係

婚姻届は出していないけれど、パートナーと二人で子どもを迎えたい。そう考えたとき、「事実婚だと不妊治療は受けられるのだろうか」「精子提供はどうなのだろう」と迷われる方がいらっしゃいます。制度によって事実婚の扱いは異なり、同じ「不妊治療」という言葉でも、対象になるものとならないものがあります。この記事では、事実婚のカップルが精子提供を検討するときに整理しておきたい点を、公的な資料をもとにまとめます。法律に関わる部分は個別の事情で結論が変わりますので、最終的な判断は専門家にご相談ください。

事実婚とはどういう関係か

事実婚(内縁)は、婚姻届を出していないものの、当事者に夫婦としての意思があり、共同生活の実態がある関係を指す言葉として使われています。法律にひとまとまりの定義が置かれているわけではなく、制度ごとに「事実婚を含むかどうか」「含む場合の確認方法」が定められているのが実情です。

そのため、「事実婚だから全部だめ」「事実婚でも全部同じ」ではなく、制度ごとに見ていく必要があります。以下では、精子提供を考えるうえで関わりの深い三つ——保険適用、医療機関でのAID、生まれた子どもとの親子関係——を順に見ていきます。

パートナーの精子を用いる不妊治療は、事実婚でも保険適用の対象とされています

令和4年(2022年)4月から、人工授精などの一般不妊治療と、体外受精・顕微授精などの生殖補助医療に公的医療保険が適用されています。この保険適用について、こども家庭庁ホームページの「不妊治療に関する取組」で公開されているリーフレットには、次のQ&Aが載っています。

「Q3 事実婚の場合も保険適用の対象ですか? A3 助成金と同様に対象となります。なお、受診の際に医療機関から、事実婚関係について確認されたり、書類を求められたりすることがあります。」

つまり、婚姻届を出していないことだけを理由に保険診療から外れるわけではありません。ただし、受診の際に関係の確認や書類の提出を求められることがある、という点は事前に知っておくと戸惑いが減ります。必要な書類の内容は医療機関によって案内が異なりますので、受診前に確認しておくと安心です。

なお、同じリーフレット(令和4年11月1日版)には、体外受精・顕微授精について治療開始時の女性の年齢が43歳未満であることや、初めての治療開始時点の年齢に応じた回数の上限(40歳未満は通算6回まで、40歳以上43歳未満は通算3回まで、いずれも1子ごと)といった要件も記載されています。ただし、ここまでの話はパートナーの精子を用いる治療についてのもので、第三者から提供された精子を用いる場合は扱いが異なります(次の項目でご説明します)。保険と自費の線引きの全体像は精子提供は保険適用される?不妊治療の保険制度と精子提供の費用を解説精子提供の費用|2026年の保険適用・自費治療の境目を整理で整理しています。

一方、医療機関でのAIDは「法的に婚姻している夫婦」が対象とされています

ここが、事実婚のカップルにとって分かれ道になります。前の項目でご説明した保険適用は、パートナー本人の精子を用いる不妊治療についての話です。第三者から提供された精子を用いる人工授精(AID)は、保険適用の対象外とされています。第三者の卵子・胚の提供や代理懐胎も同じ扱いです(こども家庭庁ホームページに掲載されている資料集「不妊治療に関する支援について」全体版・令和5年4月1日版の「不妊治療の全体像」による)。理由としては、民法の特例を定めた法律の附則第3条にもとづき、提供に関する規制のあり方などが国会で議論されている段階であることが挙げられています。今後の法整備の議論によって、扱いが変わる可能性があります。

日本産科婦人科学会が令和8年(2026年)6月に改定した「提供精子を用いた人工授精に関する見解・指針」では、対象となる方について「被実施者は法的に婚姻している夫婦で、心身ともに妊娠・分娩・育児に耐え得る状態にあるものとする」と定められています(日本産科婦人科学会雑誌78巻8号 p.1060〜1062)。解説では、法律上の夫婦であることを確認するために戸籍謄本を提出することが望ましい、ともされています。

これは法律ではなく学会の見解ですが、同じ見解は、学会員がこの方法を行う際に学会へ登録・報告することを求めており、実施施設には院内の倫理委員会での承認も求められています。結果として、事実婚のカップルは受け入れ先が限られることになります。同じ理由で、選択的シングルの方や同性カップルの方も、受け入れ先を見つけにくいのが現状です。AIDそのものの基本は非配偶者間人工授精(AID)とは?基礎から丁寧に解説をご覧ください。

民間の精子バンクという選択肢

医療機関でのAIDが法律婚の夫婦を対象としているため、事実婚のカップルが第三者からの精子提供を検討する場合、民間の精子バンクを利用する方がいます。どちらが優れているという話ではなく、ご自身の状況で選べるものが違う、という前提でご覧ください。医療機関と民間バンクの違い、それぞれの向き・不向きは精子提供を検討する前に知っておきたい医療機関と民間バンクの違いと選び方と、精子バンクとは?日本での仕組み・費用・選び方にまとめています。

ロジカル精子バンクでは、ご結婚されていない方、同性カップルの方、事実婚の方にもご利用いただけます。方法としてはシリンジ法、または医療機関での方法をご案内しており、性行為による提供は行っていません。方法ごとの違いは人工授精(AID)・体外受精(IVF)・シリンジ法の使い分け|精子提供でどの方法を選ぶべきかシリンジ法とは?精子提供における方法の違いと特徴をわかりやすく解説で解説しています。医療機関での方法をご希望の場合の進め方は、ご状況によって異なりますので、お問い合わせの際にご案内しています(提携医療機関についての考え方はクリニック紹介をご覧ください)。

民間バンクを選ぶ場合も、SNSなどを通じた個人間のやり取りにはリスクがあります。この点はSNSでの精子提供が危険な5つの理由をご確認ください。

生まれた子どもとの親子関係はどうなるか

事実婚のカップルが精子提供を検討するとき、いちばん整理しておきたいのがこの点です。法律婚の場合を含む全体像は精子提供と親子関係|民法特例法を解説にまとめていますので、ここでは事実婚の場合に絞って整理します。

まず、出産した女性が子どもの母になります。この点は、婚姻届を出しているかどうかにかかわらず変わらないと考えられています。なお、生殖補助医療に関する民法の特例を定めた法律(生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律)の第9条にも同じ趣旨の定めがありますが、こちらは卵子の提供を受けた場合についての規定で、精子提供のケースを直接定めたものではありません。

父親の側は事情が異なります。同じ法律の第10条は、次のように定めています。

「妻が、夫の同意を得て、夫以外の男性の精子(その精子に由来する胚を含む。)を用いた生殖補助医療により懐胎した子については、夫、子又は妻は、民法第七百七十四条第一項及び第三項の規定にかかわらず、その子が嫡出であることを否認することができない。」(e-Gov法令検索による)

条文が「妻」「夫」と書いていることからも分かるとおり、この特例は法律婚の夫婦を前提とした規定です。婚姻届を出していない場合には、この条文がそのまま当てはまるわけではありません。事実婚のカップルが提供精子を用いた場合の父子関係について、明文の規定は現時点では置かれていないとされています。

この場合、子どもは法律上「嫡出でない子」(民法上の用語です)という扱いになり、父との親子関係は認知によって生じることになるとされています。民法第779条は「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる」と定めています。相続の扱いについては精子提供と子の相続権|民法特例法の対象範囲と法律上の親の考え方で扱っています。

認知をめぐって知っておきたいこと

認知がされると、法律上の父子関係が生じ、扶養の義務や相続に関わってきます。パートナーが子どもを認知するかどうかは、二人にとって大きな論点になります。

なお、提供精子を用いた場合、パートナーと子どもの間に血縁関係はありません。この場合の認知の可否や効力について明文の規定はなく、個別の事情によって判断が分かれるとされています。実際に進める前に、弁護士などの専門家にご確認ください。

もうひとつ知っておきたいのが、認知を求める権利は子ども自身の権利だという点です。民法第787条は「子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる」と定めており(同条のただし書で、父または母の死亡の日から3年を経過したときは訴えを提起できないとされています)、判例上、この権利をあらかじめ放棄させることはできないと解されています。

したがって、大人どうしの取り決めや契約書で、将来子どもが認知を求める可能性まで消しておくことはできません。契約書は当事者間の合意の内容を明確に残すためのもので、子ども自身の権利をあらかじめ制限するものではないとお考えください。契約書の位置づけについては精子提供における「契約書」の役割とは?法的効力と署名の意味で整理しています。

なお、法律に関わる部分は、お二人の状況や届出の内容によって結論が変わります。具体的な進め方については、弁護士などの専門家にご相談ください。

二人で先に話しておきたいこと

事実婚のまま進めるか、婚姻届を出すかを含め、あらかじめ話し合っておくと後で迷いにくくなる項目を挙げます。

  • 子どもを認知するかどうか、そのタイミングをどう考えるか
  • 子どもの姓と、親権をどうするか
  • お二人に万一のことがあったときの備えをどうするか
  • 子どもに出自をいつ・どう伝えるか
  • それぞれのご家族に、どこまで・どのように伝えるか
  • 費用をどう分担するか、どこまでを見込んでおくか

子どもへの伝え方については精子提供で生まれた子どもにいつ・どう伝えるか|告知の悩みと向き合うを、周囲への伝え方については精子提供のことを親や周囲に打ち明けるべき?伝え方と心の準備をご参考ください。事前に確認しておきたい検査や準備は精子提供を受ける前に必要な検査と準備まとめにまとめています。

婚姻届を出すかどうかは、お二人が決めること

ここまで、法律婚と事実婚で扱いが異なる場面を見てきました。制度の面だけを見れば、法律婚のほうが手続きが単純になる場面があるのは事実です。

ただし、婚姻届を出すかどうかは、姓のこと、それぞれのご家族との関係、これまでの経緯など、さまざまな事情のうえに成り立つ選択です。当バンクから、どちらがよいかを申し上げる立場にはありません。制度の違いを知ったうえで、お二人が納得できる形を選んでいただくための材料として、この記事をお使いください。

よくある質問

事実婚でも、精子提供を受けられますか。

当バンクでは、ご結婚されていない方、同性カップルの方、事実婚の方にもご利用いただけます。ご利用の条件やお手続きの詳細は、お問い合わせの際にご案内しています。

事実婚を証明する書類は必要ですか。

保険診療で不妊治療を受ける場合は、医療機関から関係の確認や書類の提出を求められることがあるとされています。当バンクのお手続きで必要な書類は、ご状況によって異なりますので、お申し込み前にお尋ねください。

先に婚姻届を出したほうがよいのでしょうか。

制度上の扱いが変わる場面はありますが、どちらを選ぶかはお二人の事情によります。法律上の効果については、弁護士などの専門家にご相談ください。

同性のパートナーの場合はどうなりますか。

制度上の扱いは事実婚とも異なる点があります。同性カップルで子どもを迎えたい方へ|精子提供という選択肢同性カップルの精子提供、よくある悩みと解決へのヒントで整理しています。

ご相談を承っています

ロジカル精子バンクは医療機関ではありませんので、治療の適応や医学的な判断については医療機関に、法律上の効果については弁護士などの専門家にご相談ください。この記事は、こども家庭庁および学会が公開している資料、e-Gov法令検索で確認できる条文をもとに、確認の順番を整理したものです。

そのうえで、事実婚のまま精子提供を検討したい、進め方を整理したいという段階でのご相談をお受けしています。ご利用の流れ料金についてもあわせてご覧ください。気になることがあればお問い合わせからお気軽にお声がけください。

※ 当バンクは医療機関ではありません。診断・治療・妊娠を保証するものではなく、医学的なご判断は医療機関にご相談ください。

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