精子提供の基礎知識

SNSでの精子提供が危険な5つの理由|安全に精子提供を受けるために知っておくべきこと

SNSでの精子提供が危険な5つの理由|安全に精子提供を受けるために知っておくべきこと

「精子提供」と検索すると、X(旧Twitter)や掲示板で個人的に精子提供を申し出ている投稿が無数に見つかります。医療機関でのAID(非配偶者間人工授精)は、2018年以降の精子提供者の減少により治療そのものを受けることが難しくなっているとされる一方、SNSなら「今すぐ」「無料で」提供を受けられるように見えます。

しかし、その手軽さの裏には、取り返しのつかないリスクが潜んでいます。実際に、SNSを通じた精子提供でトラブルに巻き込まれた方からのご相談は後を絶ちません。

本記事では、SNSでの個人間精子提供がなぜ危険なのかを5つの観点から整理し、安全に精子提供を受けるために確認すべきポイントをお伝えします。

理由①:感染症検査が行われていない

SNSで精子提供を行っている個人の多くは、感染症検査を受けていません。「検査済みです」とプロフィールに書いていても、それが事実かどうかを確認する手段がないのが実情です。

HIV、B型肝炎、C型肝炎、梅毒、クラミジアといった性感染症は、感染していても自覚症状がないことが珍しくありません。検査証明書の提示を求めたとしても、検査後に感染している可能性や、そもそも証明書自体が偽造されている可能性も否定できません。

精子提供は直接的に体内に関わる行為です。感染症のリスクは提供を受ける女性だけでなく、生まれてくる子どもの健康にも影響します。「たぶん大丈夫」では済まされない問題です。

理由②:学歴・経歴・身元が確認できない

SNS上のプロフィールには「高学歴」「医師」「公務員」といった経歴が書かれていることがありますが、それを裏付ける証拠は何もありません。実際に、SNSで知り合った提供者が学歴や国籍を偽っていたとして、女性が損害賠償を求めて提訴した事例が報じられています。

精子提供においてドナーの情報は、将来子どもが「自分のルーツ」として向き合う情報になり得ます。その情報が虚偽であった場合、子どもに対して誠実な説明ができなくなります。匿名のSNSアカウントでは、本名すら確認できません。

理由③:法的な取り決めがなく、後日トラブルになる

個人間での精子提供では、契約書を交わさないまま提供が行われることがほとんどです。その結果、提供後に以下のようなトラブルが発生するケースがあります。

  • ▶ ドナーが後から認知を主張する
    「自分の子どもだから会わせろ」と連絡が来るケースです。口約束で「認知しない」と取り決めていても、その約束が法的にどこまで有効かは慎重に考える必要があります。現在の法律では、とくに婚姻していない女性が個人間で提供を受けた場合などに、生まれた子どもが将来、提供者に対して認知を求められる可能性があるとされています。

  • ▶ 養育費の請求や親権の主張
    逆に、提供を受けた側がドナーに養育費を請求する可能性もあります。あるいはドナー側が親権を主張するケースもゼロではありません。契約書がなければ、双方の権利義務が不明確なまま争いに発展します。

精子提供に関する日本の法整備はまだ十分ではなく、契約書の有無は、当事者間の認識のズレを防ぐうえで大きな意味を持ちます。

法律上の親子関係について、どこまでが法律で定められ、どこからが未整備のままなのかは精子提供と親子関係|民法特例法を解説で整理しています。

理由④:性行為を強要・誘導されるリスクがある

SNSでの精子提供で最も深刻な問題の一つが、「タイミング法(性行為による提供)」を前提としているドナーの存在です。

精子提供の方法には、シリンジ法(容器に採取した精子を自分で注入する方法)とタイミング法がありますが、SNS上のドナーの中には、「妊娠率が高いから」という理由で性行為を条件にする人が少なくありません。中には、精子提供を口実にした性的搾取が目的であるケースも報告されています。

「子どもが欲しい」という切実な願いにつけ込む行為であり、決して許されるものではありません。しかし、個人間のやり取りでは被害を受けても相談先が見つからず、泣き寝入りしてしまう方がいるのが現実です。

理由⑤:同一ドナーから大量の子どもが生まれるリスク

SNSで活動しているドナーの中には、同時に何十人もの女性に提供を行っている人がいます。提供回数に制限がないため、一人のドナーから非常に多くの子どもが生まれる可能性があります。

これは将来、知らないうちに異母兄弟・姉妹同士が出会い、交際や結婚に至ってしまう近親婚のリスクを生みます。海外では実際に一人のドナーから100人以上の子どもが生まれたケースが問題視されており、提供回数の管理は子どもの将来に関わる重要な課題です。

5つの理由に加えて:遺伝性疾患や家族歴が分からない

感染症検査と並んで見落とされやすいのが、ドナーの家族歴や遺伝的な情報です。個人間のやり取りでは、これらは提供者の自己申告に頼らざるを得ず、客観的に確かめる手段がありません。

血縁のある家族にどのような病気があったかといった情報は、生まれてくるお子さんの健康を考えるうえで手がかりになることがあります。提供を受けた時点では気にならなくても、お子さんが成長してから「知りたい」と思う場面が訪れることもあります。匿名のやり取りでは、あとから確認したくても連絡が取れなくなっているケースが少なくありません。

情報が得られないこと自体がただちに問題を生むわけではありませんが、「あとから確かめられない」という不確実性は、個人間の提供に特有のものです。

安全に精子提供を受けるために確認すべきこと

上記のリスクを踏まえると、精子提供を受ける際に最低限確認すべきポイントは以下の3つに集約されます。

感染症検査が第三者によって実施・管理されているか

ドナー本人の自己申告ではなく、医療機関や第三者機関による検査が実施され、その結果が管理されていることが不可欠です。ロジカル精子バンクでは、提供のたびに感染症検査を実施し、合格しない限り提供ステップに進むことはありません。

なお、感染症には、感染してから検査で分かるようになるまでの「ウインドウ期」があります。医療機関で行われるAIDでは、この期間を考慮して精子を少なくとも180日凍結保存し、その後に提供者の検査を行って陰性だったものだけを使用する方法がとられています(日本産科婦人科学会の見解)。方法によって取れる対策が異なる点も、提供を受ける先を比べるときの視点になります。

公的書類による身元確認が行われているか

マイナンバーカード、卒業証明書、在職証明書といった公的な本人確認書類や証明書類で身元が確認されていること。プロフィールの情報がすべて裏付けの取れた事実であること。これがなければ、ドナーの情報を信頼する根拠がありません。

契約書が交わされているか

認知、養育費、親権、情報開示に関する取り決めが文書で交わされていること。口約束や善意に基づく合意ではなく、書面で条件を確認しておくことは、当事者間の認識のズレを防ぐうえで重要です。ただし、生まれたお子さん本人は契約の当事者ではないため、契約によってお子さん自身の権利まで制限できるわけではありません。

まとめ:「手軽さ」で選ばないでほしい

SNSでの個人間精子提供が広がっている背景には、医療機関でのAIDのドナー不足や、独身女性・同性カップルが対象外とされる現状があります。選択肢が限られている中で、手軽に見えるSNSに流れてしまう気持ちは理解できます。

しかし、子どもの健康、自分自身の安全、そして将来の法的安定を考えれば、「どこから提供を受けるか」は最も慎重に判断すべきことです。

個人間の提供を選ぶことも、機関を通す方法を選ぶことも、それぞれのご事情のなかでの選択です。どの方法を選ぶかは、リスクを正しく知ったうえで、ご本人が納得して決めることが何より大切だと考えています。

ロジカル精子バンクでは、感染症検査・公的書類による身元確認・契約書の三重の安全基準を整えたうえで、独身女性・同性カップル・不妊夫婦を問わず、すべての方にご相談いただける体制を整えています。まずはお気軽にご相談ください。

SNSでの実際のトラブル事例と、身を守るためのチェックリストは【注意喚起】SNSでの精子提供トラブル事例と、身を守るための「安全チェックリスト」にまとめています。

※ 本記事は一般的な情報の整理を目的としたものです。当バンクは医療機関ではありません。妊娠・検査に関する個別のご判断は医師や専門機関に、法律に関わるご判断は弁護士など専門家にご相談ください。

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