妊活を進めていると、「精子の質は生活習慣で変わるのか」という疑問にたどり着く方が多くいらっしゃいます。インターネット上には断定的な情報も多く、何を信じてよいのか分かりにくいところです。この記事では、一般に指摘されている生活習慣と精子の関係を、できるだけ控えめに整理します。ロジカル精子バンクは医療機関ではありませんので、検査結果の解釈や治療については医師にご相談ください。
精子の状態は「数か月前の生活」を映すとされています
精子は日々つくられていますが、もとになる細胞が精子として送り出されるまでには、おおむね数か月かかるとされています。つまり、いま受けた精液検査の結果は、検査当日の体調というより、その前の数か月の積み重ねを映していると考えられます。
このため、生活習慣を見直しても、その効果が精液検査の数値に表れるまでには時間がかかります。1〜2週間で数値が変わらないからといって意味がないということではありませんし、逆に「来週が検査だから今週だけ気をつける」という考え方も、あまり現実的ではないとされています。
精液検査の数値の読み方については精液検査の見方|精子濃度・運動率・正常形態率の基準値にまとめています。
よく指摘されるのは喫煙
生活習慣のなかで、よく指摘されるのが喫煙です。国が公開している健康情報では、男性における喫煙の影響として、精子の変形や運動性の低下・数の減少、不妊を引き起こす可能性が指摘されています。国内の学会がまとめた男性不妊症の診療指針でも、喫煙は不妊症のリスク因子とされ、改善(禁煙)が望ましいと整理されています。
ただし、喫煙している方が必ず妊娠に至らないというわけではありませんし、禁煙すれば必ず精子の状態が良くなると約束できるものでもありません。それでも、体への影響全体を考えると、妊娠を希望される時期に禁煙を検討する価値はあるとされています。パートナーが受動喫煙をしない環境をつくる、という観点もあります。
お酒・体重・食事との関係
過度の飲酒は、精子をつくる働き(造精機能)に影響しうると指摘されています。近年は「これくらいなら大丈夫」という適量の考え方ではなく、量が少ないほどリスクも小さくなるという整理のしかたが一般的になっています。量が多い自覚のある方は、見直す余地があると考えられます。
体重については、肥満がホルモンのバランスを通じて造精機能に関わりうるとされています。特別な食事法を探すよりも、栄養の偏りを減らし、適正な体重に近づけることのほうが現実的です。
サプリメントに関心を持たれる方も多いのですが、製品によって内容も根拠もさまざまです。飲み合わせや持病との関係もありますので、医療機関で相談されることをおすすめします。当バンクから特定の製品をおすすめすることはありません。
精子は「熱」に弱いとされています
精巣は体温より少し低い温度でよくはたらくとされ、陰嚢はその温度を保つようにできていると説明されます。そのため、長時間の入浴やサウナ、膝の上でのノートパソコンの使用、長時間座り続ける仕事など、その周辺の温度が上がりやすい状況は、避けられる範囲で避けたほうがよいとされることがあります。締めつけの強い下着より通気性のよいものが勧められることもあります。
もっとも、これらを完全に断たなければならないという意味ではありません。思い当たる習慣があれば見直してみる、という程度に受け取っていただければと思います。
なお、静脈に血液がたまることで精巣の温度が上がりやすくなる状態として、精索静脈瘤が知られています。これは生活習慣ではなく、医療機関で診断・治療を検討するものです。詳しくは精索静脈瘤とは|男性不妊の代表的な原因と治療をご覧ください。
睡眠とストレス、そして「自分を責めない」こと
睡眠不足や強いストレスも、ホルモンの分泌を通じて造精機能に関わりうると指摘されています。とはいえ、妊活そのものが大きなストレスになることも多く、「ストレスをなくしましょう」という助言は現実的でないこともあります。
気をつけたいのは、生活習慣の話が「努力が足りなかったからだ」という自責につながってしまうことです。妊娠しやすさには、年齢や体質など、努力では動かせない要素も多く関わっています。生活習慣の見直しは、できることを少し整えるという位置づけで受け止めていただければと思います。
生活習慣では変えられない原因もあります
精液検査で思わしくない結果が出たとき、その原因が生活習慣にあるとは限りません。ホルモンの分泌に関わるもの、精索静脈瘤、精子の通り道の問題、染色体や遺伝子に関わるものなど、生活習慣とは別のところに原因があることも少なくありません。
ホルモンの状態は血液検査で調べることができます。詳しくは男性不妊のホルモン検査とは|FSH・LH・テストステロンでわかることをご覧ください。とくに、精液のなかに精子が見当たらない無精子症は、生活習慣の見直しで解決するものではないと考えられています。多くは精子の通り道の問題や、染色体・遺伝子、ホルモンに関わる原因が背景にあるとされ、医療機関での診断が必要です。診断された場合の整理は無精子症と診断されたら|原因・分類・治療と選択肢にまとめています。
それでも妊娠に至らないときの選択肢
ここまで書いてきたような見直しをしても、また必要な検査や治療を受けても、ご自身の精子で妊娠を目指すことが難しいと分かる場合があります。生活習慣にできることには限りがある、というのがこの記事のもうひとつの結論です。そのときには、治療を続ける、第三者からの精子提供を検討する、養子縁組を考えるなど、いくつかの道があります。どれが正しいというものではありません。
選択肢の整理は無精子症と診断されたら|原因・分類・治療と精子提供という選択肢もあわせてご覧ください。精子提供はあくまで選択肢のひとつであり、治療を否定するものではありません。
提供する側に関心をお持ちの男性へ
ここまでは精子提供を受ける側の視点で書いてきましたが、ご自身の妊活とは別に、提供する側の仕組みを知りたいという方もいらっしゃいます。ドナー登録にあたって求められることや、法律上の立場の考え方は精子ドナー登録の条件・検査・流れにまとめていますので、まずは内容をご確認ください。
ご相談を承っています
ロジカル精子バンクは医療機関ではありません。精液検査の結果の解釈や、治療が必要かどうかの判断については、泌尿器科や不妊治療を行う医療機関にご相談ください。そのうえで、精子提供という選択肢について知りたい、情報を整理したいという段階でのご相談をお受けしています。
