精子提供でようやく妊娠がわかったのに、流産してしまった——。長い準備を経てたどり着いた妊娠だからこそ、「何がいけなかったのだろう」と自分を責めたり、次に進む気持ちになれなかったりする方は少なくありません。この記事では、日本産科婦人科学会の一般向け情報やこども家庭庁の資料をもとに、流産とはどういうものか、主な原因、次の妊活の考え方、つらいときの相談先、妊娠12週以降の場合の手続きを整理します。いま出血が多い、腹痛が強い、熱があるといったときは、読み進める前に医療機関に連絡してください(激しい腹痛が続く、突然の高熱などのときは119番へ)。
流産とは|決してまれなことではありません
流産とは、妊娠22週より前に妊娠が終わってしまうことです。日本産科婦人科学会は、流産の頻度について次のように説明しています。
「妊娠の約15%は自然流産に終わります。流産率は年齢とともに上昇し、40歳を過ぎると妊娠しても40%以上が流産するといわれています。」
同じ解説では、妊娠したことがある女性のうち38%が流産を経験しているという報告もあるとして、「流産は決してまれではありません」と述べています。こども家庭庁のプレコンセプションケアのサイトでも、自然流産は全妊娠の7~15%に見られるといわれている、と紹介されています。
早期流産の主な原因は、受精卵の染色体の異常
妊娠12週未満の流産(早期流産)で最も多い原因は、赤ちゃん(受精卵)の側の異常だとされています。日本産科婦人科学会の解説では、流産した組織の染色体を調べると約80%に異常を認めたという報告を紹介したうえで、次のように説明しています。
「この場合、精子と卵子から受精卵(胚)ができる段階で、流産する運命がすでに決まっていたことになります。赤ちゃんの染色体異常は、ほとんどが偶然のできごとです。」
流産を経験した方は、生活習慣や食事、服薬、仕事のことなど、さまざまなことに原因を探してしまいがちです。日本産婦人科医会の医療者向け資料でも、そうした状況をふまえ、早期流産の主な原因(70~80%程度)は「誰にでも生じ得る胚の染色体異常であること」を説明する重要性が示されています。あなたの何かが足りなかったから起きた、と一人で抱え込まないでください。気になることがあれば、主治医に直接聞いてみることもできます。
流産にはいくつかの種類があります
同じ「流産」でも、状態によって呼び方が変わります。日本産科婦人科学会の解説をもとに主なものを挙げます。
- 稽留流産:出血や腹痛がないまま、子宮の中で赤ちゃんが亡くなっている状態。超音波検査で初めて気づく
- 進行流産:子宮の出口が開き、出血も増えるなど、流産が進み始めている状態
- 不全流産:組織の一部が子宮の中に残り、出血や腹痛が続いている状態。手術が必要なことが多い
- 完全流産:組織がすべて自然に出た状態。追加の処置が必要ないことが多い
また、妊娠検査薬などで陽性になったものの、超音波検査で胎嚢が確認される前に出血が起きる状態は、一般に「化学流産」と呼ばれます(日本産科婦人科学会の解説では「生化学的妊娠」)。同学会は、特に治療は必要なく、日本では妊娠や流産の回数に含めていないと説明しています。ただし、検査薬で陽性が出たあとに出血があっても、子宮以外の場所に着床していないか(異所性妊娠)は検査薬だけでは判断できません。まだ受診していない方は、自己判断せず産婦人科を受診してください。検査薬で陽性が出たあとの受け止め方については精子提供のあと妊娠判定はいつ?検査薬を使う時期と結果の受け止め方もご覧ください。
処置の方法や、自然に出てくるのを待つかどうかは、状態に応じて医師と相談して決めます。日本産婦人科医会の資料では、自然に出てくるのを待つ方法を選んだ場合、出血が大量のときはただちに受診することを説明しておくとされています。流産のあとに出血や痛みが続いて心配なときは、自己判断せず、診てもらった医療機関に連絡してください。出血が多い、腹痛が強い、熱が出たといったときは、夜間や休日であっても医療機関に連絡してください(突然の高熱や、激しい腹痛が続くときなど、下の119番の症状にあてはまるときは119番へ)。日本産科婦人科学会の解説では、感染を伴う流産について、放置すると感染が全身に広がることもある(敗血症)ため注意が必要とされています。
また、消防庁のリーフレット「救急車を上手に使いましょう」では、おとなの「突然のこんな症状の時にはすぐ119番!!」として、次のような症状が挙げられています(一部)。
- 突然の激しい腹痛/激しい腹痛が持続する
- 突然の高熱
- 冷や汗を伴うような強い吐き気
- 支えなしで立てないぐらい急にふらつく
- 顔色が明らかに悪い/ぐったりしている
- 意識がない、またはもうろうとしている
- その他、いつもと違う場合、様子がおかしい場合
これらにあてはまるときは、迷わず119番に電話してください。119番に電話するか迷ったときは、救急相談窓口(#7119)に相談できます(実施していない地域もあります)。
次の妊活はいつから考えていい?
流産のあと、どれくらい待てば次の妊娠を考えてよいかについて、日本産科婦人科学会は次のように説明しています。
「もし前回の流産から、次の妊娠までの間隔が短くても、流産の確率が高まることはありません。したがって、流産後にわざわざ避妊期間を設ける必要はなさそうです。」
あわせて同学会は、流産後の女性は気分が落ち込みやすく、不安も強いといわれているとして、「気持ちが落ち着くまで、次の妊娠を少しお待ちになることもあって良いと思います」とも述べています。また同じ項目では、血液型がRh(D)陰性の方は、次の妊娠に備えて抗D免疫グロブリンを注射すると説明されています。受診せずに流産した方や、ご自身の血液型がわからない方は、早めに医療機関に相談してください。体の回復の状況や、処置後の注意点は人によって違うため、再開の時期は主治医に確認したうえで、ご自身の気持ちのペースを大切にしてください。
日本産婦人科医会の医療者向け資料では、初めての早期流産(妊娠12週未満)であれば、次の妊娠で一般的な同年代の女性と比べて流産の可能性が高くなることはないとされています。妊娠12週以降の流産や死産だった場合などは、次の妊娠を考える前に主治医に相談してください(下の不育症の節も参照)。
精子提供で妊活をしている場合は、次の周期の予定をドナーや利用している機関とあらためて調整することになります。急いで予定を入れる必要はありません。心と体の準備が整ってから、無理のないスケジュールを組み直しましょう。
流産・死産が2回以上あったとき|不育症の相談
こども家庭庁が掲載している研究班の「不育症管理に関する提言2025」では、不育症は「流産あるいは死産が2回以上ある状態」と定義されています。出産したことがあるかどうかは問わず、流産や死産が連続していなくてもよいとされています。なお、化学流産(生化学的妊娠)は、この流産回数には数えません。また同じ提言では、流産・死産が1回でも、次の妊娠で流産・死産のリスクが高いと推定される状態も、不育症の考え方に含めるとしています。回数にかかわらず、気になることがあれば主治医に相談してください。
日本産科婦人科学会は、不育症の精密検査を行っても半数以上は原因不明といわれていると説明しています。検査を受けるかどうかも、主治医と相談して決めることができます。
こども家庭庁によると、各地の「性と健康の相談センター」では、不妊症や不育症に関する医学的・専門的な相談や、経験者によるピアサポート活動などの支援を行っています。また、研究段階の不育症検査のうち、先進医療として実施されるものについては、検査費用の一部を助成する制度があります(問い合わせ先はお住まいの都道府県・指定都市・中核市。2026年10月時点・詳細はこども家庭庁「不育症に関する取組み」)。相談センターの探し方は妊活・不妊の悩みはどこに相談できる?性と健康の相談センターの探し方で紹介しています。
気持ちがつらいときの相談先
こども家庭庁は、流産・死産などを含む「こどもとの死別」は、近親者との死別の中でも特に悲嘆(グリーフ)が強いとされている、と説明しています。同庁のサイトで紹介されている令和6年度の調査では、過去3年以内に流産・死産を経験した方のうち、「流産・死産のつらさが日常生活に支障をきたしたことがある」と回答した人が53.3%にのぼりました。悲しみが長く続くことは、おかしなことではありません。
- お住まいの自治体の相談窓口:自治体では流産・死産に関する相談を受け付けています。都道府県ごとの窓口の一覧は、こども家庭庁「流産・死産等を経験された方へ」に掲載されています
- 産後ケア事業:市区町村が行う産後ケア事業は、流産や死産を経験した方も対象に含まれます(実施の有無や内容は市区町村によって異なります)。詳しくは産後ケア事業とは|出産後に頼れる人が少ないときに使える市区町村の支援で解説しています
- 受診した医療機関:眠れない、気持ちの落ち込みが続くといったときも、相談してかまいません
「消えてしまいたい」と感じるほどつらいときは、すぐに話を聞いてもらってください。厚生労働省の「まもろうよ こころ」で紹介されている電話相談の一部です。
- #いのちSOS:0120-061-338(24時間 365日)
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間対応)。福島県からおかけになる場合は 0120-279-226、050で始まるIP電話からは 050-3655-0279
電話で話しにくい方のためのSNS相談や、ほかの窓口・受付時間は、厚生労働省ホームページのまもろうよ こころで確認できます。妊活が長引いて心が疲れたときの休み方については長引く妊活で心が折れそうなときにでも整理しています。
妊娠12週以降の流産・死産の場合の手続き
妊娠の週数によっては、届出や給付の対象になることがあります。主なものは次のとおりです(2026年10月時点)。
- 死産の届出:「死産の届出に関する規程」では、妊娠第4月(妊娠12週)以後の死児の出産を「死産」とし、死産後7日以内に、医師または助産師の死産証書(または死胎検案書)を添えて市町村長に届け出ることとされています。また、「墓地、埋葬等に関する法律」では妊娠4か月以上の死胎も「死体」に含めており、火葬や埋葬には市町村長の許可が必要とされています。届出をする人や火葬の手続きなどの詳しい扱いは、医療機関や市区町村の窓口で確認してください
- 出産育児一時金:厚生労働省の案内では、妊娠4か月(85日)以上での出産が支給の条件で、協会けんぽの案内では、この「出産」に死産(流産)も含まれるとされています。加入している医療保険(健康保険・国民健康保険など)で確認してください
妊娠12週未満の早期流産では、これらの対象にはなりません。また、こども家庭庁の「妊婦のための支援給付」は、医療機関で胎児心拍が確認されていれば、流産・死産をされた方も対象になるとされています。このほか、妊娠12週(85日)以降の流産・死産では、勤務先の健康保険の出産手当金、産前産後休業中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の免除、産前産後期間の国民年金保険料・国民健康保険料の免除などの対象になる場合があると、こども家庭庁のページで紹介されています。問い合わせ先は、健康保険・厚生年金保険は勤務先や加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)、国民年金は年金事務所または市区町村の国民年金担当窓口、国民健康保険と妊婦のための支援給付はお住まいの市区町村です。
よくある質問
化学流産も「流産1回」に数えますか。
日本産科婦人科学会の解説では、生化学的妊娠(いわゆる化学流産)は、日本では妊娠や流産の回数に含めていないとされています。不育症の提言でも、流産回数には数えないとされています。
流産のあと、仕事を休むことはできますか。
こども家庭庁のページでは、流産・死産後1年以内の女性労働者は、妊娠の週数を問わず「母性健康管理措置」の対象になると紹介されています。医師などから出血や下腹部痛などへの対応として一定期間の休業の指導が出されることがあり、事業主は、その指導を守ることができるようにしなければならないとされています。また、妊娠4か月以降に流産・死産した場合は、産後休業(原則8週間)の対象になります。勤務先の担当者や主治医に相談してください。
精子提供で妊娠したことを、医療機関に伝えたほうがいいですか。
流産の原因や次の妊娠の進め方を相談するうえで、妊娠に至った経緯が判断の材料になることがあります。話しにくいと感じる場合は、伝える範囲を主治医に相談してみてください。
ご相談について
ロジカル精子バンクは医療機関ではありません。流産後の体の状態や次の妊娠の時期については、受診している医療機関にご相談ください。この記事は、日本産科婦人科学会の一般向け情報「流産・切迫流産」、日本産婦人科医会の資料、こども家庭庁の公開資料、「死産の届出に関する規程」をもとに整理したものです(出典:こども家庭庁「流産・死産等を経験された方へ」「不育症に関する取組み」「はじめよう プレコンセプションケア」「産後ケア事業ガイドライン(令和8年3月)」、こども家庭庁掲載「不育症管理に関する提言2025」、厚生労働省ホームページ「出産育児一時金等について」、「墓地、埋葬等に関する法律」。本記事では、これらの内容を要約・編集して紹介しています)。
そのうえで、次の妊活に向けて精子提供の進め方をあらためて整理したいときは、ご相談をお受けしています。当バンクでは、LINEでの匿名のご相談にも対応しています。シングルで妊活をしている方は選択的シングルマザーとは?方法・費用・支援制度もあわせてご覧ください。ご入会後の進め方はご利用の流れにまとめています。気になることがあればお問い合わせからお気軽にお声がけください。
※ 当バンクは医療機関ではありません。診断・治療・妊娠を保証するものではなく、医学的なご判断は医療機関にご相談ください。
