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甲状腺の検査でわかること|妊活・妊娠との関係と橋本病・バセドウ病の基礎

甲状腺の検査でわかること(TSH・FT4)と妊活・妊娠との関係を解説する記事のアイキャッチ画像

妊活を始めるときや、不妊の検査を受けるときに、「甲状腺の検査もしておきましょう」と言われることがあります。甲状腺という名前は聞いたことがあっても、それがなぜ妊娠と関係するのかは、なかなかイメージしにくいところです。この記事では、公的な医療機関や学会が公開している資料をもとに、妊娠を考える時期に甲状腺の検査がすすめられる理由と、検査でわかることを整理します。なお、当バンクは医療機関ではありません。検査の要否や結果の判断は、必ず医師にご相談ください。

甲状腺はどこにある、何をする臓器か

甲状腺は、のどぼとけの下にある、蝶が羽を広げたような形をした小さな臓器です。ここで作られる甲状腺ホルモンは、血液の流れに乗って心臓や肝臓、腎臓、脳など全身の臓器に運ばれ、体の新陳代謝を調節するという大切な働きをしています(日本内分泌学会「甲状腺機能低下症」による)。

甲状腺ホルモンがどれくらい作られるかは、脳の下垂体から出る甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されています。血液検査で甲状腺の状態を見るときにTSHが測られるのは、このためです。

なぜ妊娠を考える時期に甲状腺を調べるのか

甲状腺ホルモンは代謝の調節だけでなく、妊娠そのものにも関わります。日本内分泌学会の解説では、次のように説明されています。

「甲状腺ホルモンは、代謝の調節以外にも、妊娠の成立や維持、子供の成長や発達に重要なホルモンなので、甲状腺機能低下症では、月経異常や不妊、流早産や妊娠高血圧症候群などと関連し、胎児や乳児あるいは小児期の成長や発達の遅れとも関連してきます。」

国立成育医療研究センターが行っている妊娠前の健康チェック「プレコンチェック」でも、甲状腺機能は検査項目のひとつに入っており、その目的は次のように書かれています。

「甲状腺ホルモンのバランスが悪いと不妊症や流産の原因になることもあります。妊娠前に甲状腺ホルモンのバランスをきちんと評価しましょう。」

ここで大切なのは、「甲状腺に異常があると妊娠できない」という話ではないということです。関連が指摘されている、原因になることもある、という水準の説明です。そのうえで、調べれば分かること、分かれば対応できることがあるため、妊娠前に一度確認しておく意味がある——という整理になります。

検査は血液検査で、TSHとFT4を見る

甲状腺の機能は、採血で調べられます。前述のプレコンチェックでは、甲状腺機能の検査内容として「TSH、FreeT4」が挙げられており、あわせて抗TPO抗体(甲状腺に対する自己抗体のひとつ)もベーシックプランの検査項目に含まれています。同センターのカップル向けプランでは、甲状腺機能は女性側の項目として挙げられ、男性側は計測と感染症の抗体チェックが中心となっています。

採血で調べられるため、ほかの血液検査とあわせて受けられる場合もあります。実際の受け方は受診先にご確認ください。ただし、数値の読み方や基準の当てはめは医師の判断領域です。この記事では、基準値や治療の目安となる具体的な数値には触れません。結果票の数字だけを見て自己判断せず、検査を受けた医療機関で説明を受けてください。

自覚症状が出にくいタイプがある

甲状腺の機能異常のなかには、症状としてはほとんど表に出ないものがあります。日本内分泌学会は、これを「症状や所見には表れない程度の軽い甲状腺ホルモンの過不足状態」と説明したうえで、遊離甲状腺ホルモン(FT4)が基準範囲内なのにTSHだけが高い状態を「潜在性甲状腺機能低下症」、逆にTSHだけが低い状態を「潜在性甲状腺中毒症」と呼び、あわせて「潜在性甲状腺機能異常」として解説しています。

同学会の解説によれば、潜在性甲状腺機能異常では「自覚症状はないことがほとんど」とされ、潜在性甲状腺機能低下症については「高コレステロール血症や心機能低下、女性では不妊や流産との関連が指摘されています」と説明されています。頻度については、同じ「潜在性甲状腺機能異常」の解説で、潜在性甲状腺機能低下症は健康な人の3.3〜6.1%、潜在性甲状腺中毒症は0.8〜2.3%にみとめられるとされています(調査によって幅があり、同学会の別のページではより広い範囲も示されています)。

つまり、「特に不調はないから大丈夫」とは言い切れないタイプがある、ということです。逆に言えば、一度採血をすればわかることでもあります。なお、同学会は、こうした異常が見つかった場合について、まずは一過性のものでないことを確認するために1〜3か月ほど後に再検査する、と説明しています。1回の結果だけで結論が出るとは限らない点も、あらかじめ知っておくと落ち着いて受け止められます。

そして、見つかったときに打つ手があることも、あわせて知っておいてください。同学会は、妊娠を希望する場合や妊娠中の潜在性甲状腺機能低下症について、状態によっては治療によってリスクを改善できるとしています。どう対応するかは医師の判断になりますので、まずは妊娠を希望していることを伝えたうえでご相談ください。

橋本病とバセドウ病——名前は聞くけれど

甲状腺の病気としてよく名前が挙がるのが、橋本病とバセドウ病です。どちらも自己免疫のしくみが関わる病気とされています。

橋本病(慢性甲状腺炎)

甲状腺ホルモンが少なくなる病気の代表とされます。日本内分泌学会の「橋本病(慢性甲状腺炎)」の解説では「成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人にみられます」と、決して珍しくない病気であることが示されています。特に30〜40代の女性に発症することが多いとされ、妊娠を考える年代と重なります。

同学会の解説では、症状として、甲状腺が腫れてくびの圧迫感や違和感が生じることがあり、甲状腺機能低下症になると全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じるとされています。女性では月経過多になることがある、とも書かれています。思い当たるものがあれば、それを医師に伝える材料になります(ただし、これらは他の原因でも起こるものです。症状だけで判断はできません)。

ただし、同じ解説には次のようにも書かれています。

「橋本病だからといって、全員の甲状腺ホルモンが少なくなるわけではなく、橋本病のうち甲状腺機能低下症になるのは4~5人に1人未満です。大部分の人では甲状腺ホルモンは正常に保たれています。」

甲状腺機能が正常な橋本病では原則的に治療は必要ない、ともされています。「橋本病と言われた=すぐに治療が必要」ではないということです。

ただし、この「原則」には妊娠が関わる場面の例外があります。同学会は、妊娠を希望する場合や妊娠中の橋本病について別に項目を設けて説明しており、機能の状態によって対応の考え方が変わりうるとしています。ですので、診断名だけで不安を大きくする必要はありませんが、妊娠を希望していることを伝えたうえで、いまの機能がどうなのかを主治医に確認するのが先になります。

バセドウ病

逆に、甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気(甲状腺機能亢進症)の代表とされます。日本内分泌学会の「バセドウ病」の解説によれば、頻度は人口1000人あたり0.2〜3.2人と報告されており、20〜30代の若い女性に多い病気とされています。典型的な症状としては、動悸、体重減少、指の震え、暑がり、汗かきなどが挙げられ、女性では生理が止まることがあるとも説明されています。

治療法は大きく分けて、薬物(抗甲状腺薬)治療、放射性ヨウ素内用療法、手術の3つがあるとされています。ここで妊娠を考えている方に関わってくるのが、放射性ヨウ素内用療法は小児や妊婦・授乳婦では行えないとされている点です。なお同学会は、未治療のままでは長期的にリスクが高いため、いずれかの治療が必要としています。妊娠を望むから治療そのものを見送る、という話ではありません。どの治療を選ぶかは主治医の判断ですが、妊娠を希望していることを最初に伝えておくと、その前提で相談が進みます。

卵管造影検査を受ける予定がある方へ

もうひとつ、不妊検査と甲状腺が交差する場面があります。日本内分泌学会の「潜在性甲状腺機能異常」の解説には、油性ヨウ素含有造影剤を使う子宮卵管造影検査について、次のような報告が紹介されています。検査前の甲状腺機能が正常だった場合は、検査後に潜在性甲状腺機能低下症がみられることがあるものの一過性であるとされる一方、検査前から潜在性甲状腺機能低下症がある場合には、検査後の数か月のうちに機能の低下がはっきりしてくることがある、というものです。同学会は、この点について注意が必要としています。

卵管造影は妊活の過程で受ける方が少なくない検査です。検査そのものを避けるという話ではなく、甲状腺の状態を先に把握しておくと、検査前後の相談がしやすくなるという位置づけで捉えてください。卵管造影検査そのものの流れは卵管造影検査とは?精子提供前に知っておきたい不妊検査の基本にまとめています。

ヨウ素(ヨード)の摂りすぎには注意

日本内分泌学会の「甲状腺機能低下症」の解説では、昆布やヨード卵、ヨウ素を含む薬剤などからヨウ素を過剰に摂取することでも甲状腺機能低下症を認めることがある、と説明されています。ただし同じ解説では、これは一過性のものとして挙げられており、摂取を制限するだけで改善するとされています。

また、橋本病がある方の日常生活の注意として、同学会は「神経質になる必要はありませんが、昆布やひじきなどのヨウ素を大量に含むような海藻類などを過剰に摂取することは避けましょう」と書いています。

「体にいいから」と特定の食品を大量に摂り続けることは、かえって逆に働く場合があるということです。通常の食事の範囲を過度に怖がる必要はありませんが、サプリメントを含めて偏った摂り方をしていないか、一度振り返ってみてください。生活習慣の見直し全般については、男性側の視点になりますが精子の質と生活習慣|喫煙・お酒・体重・熱との関係と見直しのポイントも参考になります。

精子提供を検討している方は、どの順番で確認するか

精子提供を考えている方の場合、ドナー選びやタイミングの話が先に立ちがちですが、受ける側の体の状態を先に把握しておくほど、後の判断がしやすくなります。妊娠を考える時期に確認しておきたい項目として、当サイトでは次のような記事を用意しています。

検査と準備の全体像は精子提供を受ける前に必要な検査と準備まとめに、進め方の流れは精子提供の流れと手順を完全解説|初回相談から妊娠までのステップにまとめています。なかなか結果が出ないときの考え方は精子提供で妊娠できない…落ち込む前に試したい次のステップとはもあわせてご覧ください。

なお、この記事で扱っているのは提供を受ける側(女性側)のホルモンの話です。男性側のホルモン検査(FSH・LH・テストステロンなど)は目的も項目も異なりますので、男性不妊のホルモン検査とは|FSH・LH・テストステロンでわかることで分けて解説しています。精液検査の見方は精液検査の見方|精子濃度・運動率・正常形態率の基準値を解説をご覧ください。

よくある質問

甲状腺の検査はどこで受けられますか。

不妊治療を扱う産婦人科のほか、内科や内分泌の専門外来などで受けられます。妊娠を考えていることを伝えたうえで、必要な項目を医師にご相談ください。健康診断の項目に含まれていない場合もありますので、以前の結果票を確認してみるのも一つです。

症状が何もなければ、受けなくてもよいですか。

受けるかどうかは医師の判断になりますが、潜在性甲状腺機能異常のように自覚症状がほとんど出ないタイプがあることは知っておいて損はありません。妊娠前の健康チェックとして甲状腺機能を項目に入れている公的な医療機関もあります。気になる場合は、受診の際に相談してみてください。

甲状腺の治療を受けている最中でも、精子提供を検討できますか。

治療中に妊娠を目指せるかどうかは、病名・治療内容・現在の状態によって異なりますので、必ず主治医にご確認ください。そのうえで進め方をご相談いただくことは可能です。当バンクは医療機関ではありませんので、医学的な適否の判断は行っていません。

男性側も甲状腺を調べたほうがよいですか。

ご紹介した国立成育医療研究センターのカップル向けプランでは、甲状腺機能は女性側の項目として挙げられています。ただし、同プランの男性側は計測と感染症の抗体チェックが中心で、血液の生化学検査そのものが含まれていません。プランの構成上の話であって、男性が調べる必要がないという意味ではありません。気になる症状がある場合や、医師からすすめられた場合は、内科などにご相談ください。

ご相談を承っています

この記事は、日本内分泌学会が一般向けに公開している解説と、国立成育医療研究センターが公開しているプレコンチェックの検査項目・目的をもとに、確認の順番を整理したものです。個別の診断・治療については、必ず医療機関にご相談ください。

ロジカル精子バンクでは、精子提供を検討する段階でのご相談をお受けしています。ご利用の条件や進め方はご利用の流れ料金についてをご覧ください。ドナー精子の検査・管理の体制については安全性・検査体制にまとめています(この記事で扱った甲状腺の検査とは別のものです)。おひとりで子どもを迎えることを検討されている方は選択的シングルマザーという選択肢、精子バンクの仕組みから知りたい方は精子バンクとは?日本での仕組み・費用・選び方もあわせてご覧ください。気になることがあればお問い合わせからお気軽にお声がけください。

※ 当バンクは医療機関ではありません。診断・治療・妊娠を保証するものではなく、医学的なご判断は医療機関にご相談ください。

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