妊活を始めるときに「葉酸(ようさん)はとったほうがいい」と聞いたことがある方は多いと思います。ただ、「いつから飲めばいいの?」「どれくらい?」「食事だけでは足りないの?」と、具体的なところで迷う方も少なくありません。この記事では、こども家庭庁のプレコンセプションケア(妊娠前からの健康づくり)の情報サイト「はじめよう プレコンセプションケア」の解説(2026年3月24日公開)と、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに、葉酸が妊娠の前から大切とされる理由、とり始める時期と量の目安、とりすぎへの注意を整理します。精子提供で妊活を始める方が準備に組み込むときの考え方にも触れます。持病のある方や服薬中の方は、始める前に医師・薬剤師にご相談ください。
葉酸とは|妊娠の前から大切とされる理由
葉酸は、水溶性のビタミンB群の一種です。こども家庭庁のプレコンセプションケアの情報サイト(以下、こども家庭庁のサイト)では、細胞が新しくつくられるときに必要なDNAの合成に関わる栄養素として説明されています。
妊娠のごく初期は、おなかの中の赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる「神経管」がつくられる時期にあたります。こども家庭庁のサイトでは、この時期に葉酸が不足すると、赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症リスクが高まることがわかっていると説明されています。神経管閉鎖障害は、神経管がうまく閉じないことで起こる病気で、日本では背骨がうまく閉じない「二分脊椎(にぶんせきつい)」が大部分を占めるとされています。
また葉酸は赤血球の形成にも関わり、不足すると貧血を起こしやすくなることも紹介されています。
ただし、同じサイトでは次のようにも書かれています。
「神経管閉鎖障害の発症の原因は葉酸不足だけではないため、葉酸を摂取しても、リスクが完全になくなるわけではありません。」
葉酸は「とれば必ず防げる」というものではなく、リスクを下げるために、妊娠の前から備えておくものと考えるとよいでしょう。
いつからとる?|妊娠1か月以上前から妊娠3か月まで
赤ちゃんの神経管は、妊娠のごく初期につくられます。こども家庭庁のサイトでは、妊娠後およそ28日が神経管の形成にとって重要な時期とされ、次のように書かれています。
「神経管閉鎖障害の発症を予防するためには、妊娠1か月以上前から妊娠3か月にかけて葉酸を十分に摂取することが望ましいとされています。」
妊娠がわかるのは、多くの場合この大切な時期が始まったあとです。だからこそ、「妊娠してから」ではなく「妊娠を考え始めた時点から」とっておくことが勧められています。
精子提供で妊活をする場合の考え方
精子提供による妊活では、提供を受ける時期をある程度ご自身で計画できることが多いと思います。その場合は、最初の提供を受ける1か月以上前からとり始めておくと、この目安に沿いやすくなります。精子提供で妊娠するまでには何周期かかかることも珍しくありませんので、妊活を続けているあいだは続けておくことが大切です。回数や期間の目安は精子提供で妊娠するまで何回かかる?回数と期間の目安をデータ解説にまとめています。
どれくらいとる?|食事に加えて1日400μg、とりすぎにも注意
とる量について、こども家庭庁のサイトでは次のように説明されています。
「妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性及び妊娠初期の妊婦は、おなかの中の赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを低下させるために、通常の食事からの葉酸摂取に加えて、サプリメントや強化された食品から葉酸を400μg/日摂取することが望まれています。」
ポイントは、「通常の食事からの葉酸に加えて」という部分です。400μg(マイクログラム)は、食事でとる分とは別に、サプリメントや葉酸が強化された食品からとる量の目安として示されています。
一方で、とりすぎへの注意もあります。同じサイトでは、通常の食品だけをとっている場合は過剰摂取による健康障害は報告されていない一方、サプリメントや強化された食品の葉酸をとりすぎた場合には健康への影響が報告されているとして、次のように書かれています。
「サプリメントや強化された食品を摂取する場合は1000μg/日を超えないように注意してください。」
この上限は、国の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では年齢によって異なり、サプリメントや強化された食品からとる葉酸について、18〜29歳は900μg/日、30〜64歳は1,000μg/日とされています(男女とも同じ値です)。20代の方は、900μgを目安にしてください。
妊活中はマルチビタミンや妊活向けのサプリメントなど、いくつかの製品を併用することもあります。それぞれに葉酸が入っていると、合計量が思ったより多くなることがあります。パッケージの成分表示で1日あたりの葉酸の量を確認し、合計が上限を超えないようにしておくと安心です。なお、医師から別の量を指示されている場合は、その指示に従ってください。
食事からとるには
サプリメントを使う場合も、土台になるのは毎日の食事です。こども家庭庁のサイトでは、主食・主菜・副菜を組み合わせたバランスのとれた食事を基本に、葉酸を多く含む食品を取り入れていくことが勧められています。葉酸を多く含む食品として挙げられているのは、次のようなものです。
- ほうれん草、ブロッコリー、白菜 などの野菜
- とうもろこし、えだまめ、さつまいも
- いちご
- レバー
葉酸は妊娠前の女性だけに必要な栄養素ではありません。同じサイトでは、「日本人の食事摂取基準2025年版」で18歳以上の男女の葉酸の推奨量は240μg/日とされていることも紹介されています。この推奨量は、サプリメントではなく通常の食品からとる葉酸を対象に設定されたものです。
とる前に知っておきたい注意点
「飲めば安心」ではない
先に見たとおり、神経管閉鎖障害は葉酸不足だけが原因で起こるものではなく、こども家庭庁のサイトでも、葉酸のサプリメントをとっただけで必ず予防できるものではないとされています。葉酸は妊娠前からできる備えのひとつとして、ほかの準備とあわせて考えてください。
持病がある方・薬を飲んでいる方は、医師・薬剤師に相談を
厚生労働省の「統合医療」情報発信サイト(eJIM)では、米国の公的機関の資料をもとに、葉酸のサプリメントと一部の医薬品が互いに影響し合う可能性があることを紹介し、飲んでいるサプリメントと医薬品をすべて医師や薬剤師に伝えるよう呼びかけています。持病の治療で薬を飲んでいる方は、自己判断でサプリメントを始めず、主治医や薬剤師に相談してから始めてください。
持病があって妊娠を考えている方の、妊娠・授乳中の薬に関する相談については、こども家庭庁の資料で、全国47都道府県の拠点病院に「妊娠と薬外来」が設置され、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」と連携して相談支援を行っていることが紹介されています。利用のしかたは、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」のページで確認できます。主治医とあわせて相談先として知っておくと安心です。
すでに妊娠がわかった方は
「妊娠がわかる前にとっていなかった」と不安になる方もいるかもしれません。ただ、神経管閉鎖障害の原因は葉酸不足だけではありません。心配なことがあれば、ひとりで抱えずに、妊婦健診で医師や助産師に相談してください。妊娠がわかったあとの流れは精子提供で妊娠したあとの流れ|産科の受診から出生届までの進め方にまとめています。
男性のパートナーやドナーは?
ここまで紹介した「食事に加えて1日400μg」という目安は、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の妊婦を対象にしたものです。男性については、先に触れたとおり、18歳以上の男女とも食品からの推奨量が240μg/日とされています。まずはバランスのとれた食事を心がけることが基本です。
男性の側で妊活のためにできることとしては、喫煙やお酒、体重、熱など生活習慣の見直しがよく挙げられます。詳しくは精子の質と生活習慣|喫煙・お酒・体重・熱との関係と見直しのポイントをご覧ください。
精子提供で妊活を始める前の準備として
葉酸は、妊娠前から始めておきたい準備のひとつです。ほかにも、妊娠前に確認しておきたいことがいくつかあります。
- 風しんの抗体やワクチン接種歴の確認(ワクチンを接種した場合は一定期間の避妊が必要になるため、提供のスケジュールと合わせて考える必要があります):妊活前に確認したい風しんの抗体検査とワクチン|妊娠中は接種できない理由
- 甲状腺など、妊娠・出産に関わる体の状態の確認:甲状腺の検査でわかること|妊活・妊娠との関係と橋本病・バセドウ病の基礎
- 精子提供を受ける前の検査全般:精子提供を受ける前に必要な検査と準備まとめ
排卵のタイミングのとらえ方など、提供を受ける時期の考え方は精子提供の成功率を上げるには?妊娠しやすいタイミングと事前準備を解説でも解説しています。
よくある質問
食事だけでは足りないのでしょうか。
こども家庭庁のサイトでは、妊娠を計画している女性などについて、通常の食事からの葉酸に加えて、サプリメントや強化された食品から1日400μgとることが望まれるとされています。食事はバランスよく、そのうえでサプリメントなどで補う、という考え方です。
いつまで続ければよいですか。
神経管閉鎖障害の予防の観点では、妊娠1か月以上前から妊娠3か月にかけて十分にとることが望ましいとされています。妊娠がわかったあとは、妊婦健診で医師や助産師に確認しながら進めてください。
多めにとったほうが効果がありますか。
多くとればよいというものではありません。サプリメントや強化された食品からとる場合は、1日1,000μgを超えないように注意するよう呼びかけられています。国の食事摂取基準では、この上限は18〜29歳では900μg/日とされています。複数のサプリメントを飲んでいる方は、葉酸の合計量を確認してください。
どのサプリメントを選べばよいですか。
特定の製品をおすすめすることはできません。成分表示で1日あたりの葉酸の量を確認し、ほかのサプリメントとあわせた合計量が上限を超えないかを見ておくことが大切です。持病のある方や薬を飲んでいる方は、医師・薬剤師にご相談ください。
ご相談を承っています
ロジカル精子バンクは医療機関ではありません。葉酸のとり方やサプリメントの利用について、医学的なご判断が必要な場合は医療機関にご相談ください。この記事は、こども家庭庁のプレコンセプションケアの情報サイトや厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」などの公的な情報をもとに、全体像を整理したものです。
そのうえで、精子提供で妊活を始めるにあたって、準備やスケジュールの立て方を整理したいという段階でのご相談をお受けしています。ご入会後の進め方はご利用の流れにまとめています。気になることがあればお問い合わせからお気軽にお声がけください。
※ 当バンクは医療機関ではありません。診断・治療・妊娠を保証するものではなく、医学的なご判断は医療機関にご相談ください。
