精子提供の基礎知識

おたふくかぜと男性不妊|ムンプス精巣炎とは?精子への影響と確認のしかた

おたふくかぜと男性不妊|ムンプス精巣炎とは?精子への影響と確認のしかた

妊活について調べていくと、「おたふくかぜにかかると男性は不妊になる」という話を目にすることがあります。子どもの頃にかかった記憶がある方、あるいは大人になってからかかった方にとっては、気になる一文だと思います。この記事では、おたふくかぜと精巣の炎症(精巣炎)の関係について、国が公開している資料をもとに整理します。結論から先にお伝えすると、精巣炎を合併しても不妊症の原因となるのはまれとされています。そのうえで、気になる場合に何を確認すればよいのかまでをまとめます。診断は医療機関が行うものですので、本記事は理解の助けとしてご覧ください。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)とはどんな病気か

おたふくかぜは、正式には「流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)」といい、ムンプスウイルスによって起こる感染症です。「ムンプス」と呼ばれることもあります。主な感染経路は、唾液を介した飛沫による人から人への感染です。

厚生労働省ホームページに掲載されている「おたふくかぜワクチン ファクトシート(第2版)」(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所・令和8年6月19日改訂)によると、感染から発症までの潜伏期間は標準的には16日から18日(幅は12日から25日)とされています。発熱や頭痛、だるさなどに続いて、耳の下あたり(耳下腺)が腫れて痛むのが代表的な症状です。

ウイルスは唾液腺だけでなく、髄膜、膵臓、精巣、卵巣などにも広がることがあり、そこで炎症を起こすことがあります。合併症は、子どもよりも思春期・成人でより重くなる傾向があるとされているのが、この病気の特徴です。

思春期以降にかかると、男性は精巣炎を合併することがある

「おたふくかぜは子どもの病気」という印象が強いかもしれませんが、大人がかかることもあります。そして、思春期以降にはじめてムンプスウイルスに感染した場合、男性では精巣に炎症が起きる「ムンプス精巣炎」を合併する頻度が高くなることが知られています。女性では卵巣炎を合併することがあります。

精巣炎を合併すると、精巣の腫れや痛み、発熱などがみられることがあります。なお同じファクトシートには、耳下腺の腫れや痛みがないまま、精巣炎などが主な症状となる場合もあると記載されています。症状の出方には個人差がありますので、気になる症状があるときは、顔の腫れの有無にかかわらず医療機関を受診してください。

精子への影響はどう書かれているか

もっとも気になるのは「精子をつくる力にどれくらい影響するのか」という点だと思います。前述のファクトシートには、次のように記載されています。

「思春期以降になって初めてムンプスウイルスに感染すると、精巣炎(14%~35%)や卵巣炎(5%)の合併頻度が高くなる。精巣炎を合併した患者には様々な程度の睾丸萎縮を伴い、精子数は減少するが、不妊症の原因となるのはまれである。」

この記述を読み解くと、次のように整理できます。

  • 思春期以降にはじめて感染すると、精巣炎を合併する頻度が高くなるとされている
  • 精巣炎を合併した場合は、さまざまな程度の精巣の萎縮を伴うとされている(程度には幅がある)
  • 精子の数は減少するとされている
  • ただし、それが不妊症の原因となるのは「まれ」とされている

つまり、「おたふくかぜにかかった=不妊」ではありません。一方で、影響がまったくないと言い切れるものでもなく、程度に個人差があるという書かれ方です。ご自身がどうであるかは、この統計から分かるものではありません。心配な場合、今の状態は検査で確かめられます。不安なまま抱え込む必要はない——これがこの記事でいちばんお伝えしたい点です。

「かかった記憶がない」方も一定数います

同じファクトシートには、およそ30%の症例は症状が現れない不顕性感染(ふけんせいかんせん)であると報告されている、という記載もあります。症状が出ないまま感染していることがあるということです。

ただし、この30%という値には続きがあります。同じ資料には、これは全年齢を平均した値で、不顕性感染は乳児に多く、年齢が高くなるにつれて症状が出る割合は上がる(1歳では20%、4歳以上では90%程度が発症する)という報告もあると書かれています。つまり、ある程度の年齢になってから感染していれば、多くの場合は症状が出ていたと考えられます。

とはいえ、幼いころの感染は記録が残っていないことも多く、記憶だけで判断しきれない場合があります。母子健康手帳に予防接種歴や罹患歴が残っていれば手がかりになりますが、手元にない方も少なくありません。

ただし、記憶がはっきりしないこと自体は問題ではありません。過去をたどるより、今の精子の状態を確認するほうが確かめやすいからです。

気になるときに確かめる方法は、精液検査

おたふくかぜにかかったかどうか、精巣炎を起こしたかどうかにかかわらず、精子をつくる力が今どうなっているかを知る方法は精液検査です。精子の数(精子濃度)、動いている精子の割合(運動率)、形の整った精子の割合(正常形態率)などを調べます。

検査の見方については精液検査の見方|精子濃度・運動率・正常形態率の基準値を解説にまとめています。数値は体調や禁欲期間によっても変わるため、1回の結果だけで判断せず、必要に応じて期間をあけて再検査を行うのが一般的とされています。

精液検査で数値が思わしくなかった場合、その原因を調べるために、ホルモンの検査や超音波検査などが行われることがあります。ホルモン検査でわかることは男性不妊のホルモン検査とは|FSH・LH・テストステロンでわかることで、男性不妊の原因として比較的多くみられる精索静脈瘤については精索静脈瘤とは|男性不妊の代表的な原因と治療・精子提供という選択肢で解説しています。

どこに相談すればよいか

精巣が腫れて痛む、発熱をともなうといった急性の症状があるときは、様子を見ずに医療機関を受診してください。おたふくかぜかどうかを含めて、診断は医師が行います。

一方、過去のことが気になって精子の状態を調べたいという場合は、泌尿器科(男性不妊を扱う医療機関)や不妊治療を行う施設が相談先になります。パートナーと一緒に受診するかどうかは、ご事情に合わせて決めて構いません。

なお、生活習慣も精子の状態に関わるとされています。あわせて見直せる点は精子の質と生活習慣|喫煙・お酒・体重・熱との関係と見直しのポイントにまとめています。

予防できる感染症であるということ

ファクトシートには、おたふくかぜには不顕性感染があるため発症者の隔離では流行を止められず、「ムンプスウイルスの曝露を受ける前に、予防効果のある生ワクチンの接種を受けて免疫を獲得しておくことが、唯一有効な手段である」と記載されています。また、多くの先進国では2回の公的な予防接種が行われている一方、わが国では現在任意接種となっている、とも書かれています。

予防接種の制度は見直しの検討が進められている分野です。2026年8月時点の記述をもとにしていますので、接種の対象や費用の扱いは、お住まいの自治体の案内や医療機関で最新の情報をご確認ください。接種を受けるかどうか、受けられる状態かどうかの判断も医療機関で行われます。

妊活の前に確認しておきたい感染症としては、風しんもよく挙がります。こちらは妊活前に確認したい風しんの抗体検査とワクチン|妊娠中は接種できない理由で扱っています。

もし精子の状態が大きく低下していた場合

検査の結果、精子が非常に少ない、あるいは精液中に精子が見つからない(無精子症)と分かることもあります。その場合でも、そこで終わりというわけではありません。

無精子症には、精子をつくる機能そのものの問題によるものと、精子の通り道がふさがれていることによるものがあり、区別のしかたは閉塞性無精子症(OA)と非閉塞性無精子症(NOA)の違い|TESEの位置づけと選択肢で整理しています。精巣から直接精子を採取する方法についてはTESE/Micro-TESE(精巣内精子採取術)とは?適応・費用・成功率の現状をご覧ください。

治療を続ける、精巣内精子採取術を検討する、第三者からの精子提供を考える、養子縁組を考えるなど、進み方はひとつではありません。原因の分類から治療までを含めた全体の整理は記事の無精子症と診断されたら|原因・分類・治療と精子提供という選択肢に、これから調べはじめる方に向けたご案内は無精子症と診断されたら|精子提供という選択肢にまとめています。精子提供はあくまで選択肢の一つで、治療を否定するものではありません。なお、事実婚(婚姻届を出していない)の場合は、医療機関での提供精子を用いた人工授精(AID)の対象や、生まれた子どもとの親子関係の扱いが法律婚と異なります。制度ごとの整理は事実婚のカップルが精子提供を考えるとき|保険適用・AIDの対象・親子関係をご覧ください。

よくある質問

子どもの頃におたふくかぜにかかりました。心配したほうがよいですか。

ファクトシートに示されている精巣炎の頻度(14%〜35%)は「思春期以降」の値で、思春期以降にはじめて感染した場合に合併頻度が高くなる、という説明のしかたがされています。思春期より前の罹患について、同じ資料に数値の記載はありません。そのうえで、実際の状態を知りたい場合は精液検査で確認できます。記憶をたどるより、検査で確かめるほうが確実です。

片側だけの精巣炎でも精子はつくれなくなりますか。

精巣炎を合併した場合はさまざまな程度の萎縮を伴うとされ、その程度には幅があります。どの程度かによって影響は異なりますので、一律には言えません。実際の状態は精液検査などで確認することになります。

大人になってからワクチンを受けられますか。

接種の可否や必要性は、これまでの接種歴や抗体の状況、体調によって変わります。医療機関でご相談ください。当バンクからは判断をお伝えできません。

精液検査はパートナーと一緒に受けたほうがよいですか。

どちらでも構いません。ご一緒に受診される方も、まずお一人で調べてから話される方もいます。ご事情に合わせてお決めください。

ご相談を承っています

くり返しになりますが、ロジカル精子バンクは医療機関ではありません。おたふくかぜや精巣炎の診断・治療、精液検査の結果の解釈は、医療機関にご相談ください。この記事は、厚生労働省ホームページに掲載されている資料をもとに、確認の順番を整理したものです。

そのうえで、検査の結果を受けて精子提供という選択肢について知りたい、進め方を整理したいという段階でのご相談をお受けしています。ご入会後の進め方はご利用の流れにまとめています。気になることがあればお問い合わせからお気軽にお声がけください。

※ 当バンクは医療機関ではありません。診断・治療・妊娠を保証するものではなく、医学的なご判断は医療機関にご相談ください。

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